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 何年か前、すれ違うときに肩を引いたり、傘を傾げたりする江戸しぐさを守ろう、という動きがありました。今は歩きスマホが当たり前になってしまい、肩など、ぶつかっても一いち挨拶もなく、知らんふりです。
 私どもが幼いころには、江戸しぐさとともに、まだ江戸ことばが盛んに使われていました。使われる「ことば」があって、初めて「しぐさ」があったような気がします。

 今では古典落語や小津映画でしか聞かれなくなってしまった江戸ことばを振り返ってみましょう。

 私が好きなものは「いっちくだっちく」と「いかれぽんち」です。江戸ことばは下町に住む職人たちが使っていましたから、「互い違い」を意味する「いっちくだっちく」や「軽薄で間抜けな男」を意味する「いかれぽんち」などはよく使われたものです。
 「この、いかれぽんち野郎」などと言われると、むしろ愛情を感じたものでした。寅さん映画で「バカだなぁ~」が出てくる時と同じかもしれません。
 小津映画では笠智衆がよく「芝居」を「芝や」といっていますが、私が子供のころはごく普通のことでした。もちろん文法的には間違いでしょう。でもだれも、間違いだ、などという人はおりません。落語などで「女郎」を「じょうろ」ということも同じですね。
 それらのささいな間違いをゆるし、各地の方言を取り込んでしまうゆとりがあって初めて、思いやりのある江戸しぐさが出てきたように思うのですが、いかがでしょうか。


1 朝日新聞1月16日 
 朝日新聞 1/16 be
 ことばの食感 意外な東京方言