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           求愛

     瀬戸内寂聴    集英社


1 求愛


 若い頃は、瀬戸内寂聴さんの小説は新作が出るのを待ちきれない思いで読みました。

 寂聴さんのものばかりではなく、宇野千代さんや新田次郎・五木寛之・立原正秋・森村誠一諸氏らの作品も、むさぼるように読んでいます。

 その頃は今のように「事実は小説よりも奇なり」のできごとが連続する世の中ではなく、まだ、夢や希望、つまりロマンがありました。

 ゆえに、小説を読むことによって違う世界のできごとや、理想的な恋愛を疑似体験することが、まだできたのですが。

 いつの頃からか、それらのことが、ばかばかしくなってきてしまったのです。

 50歳を過ぎたころからでしょうか、世の中のできごとが、小説よりも奇抜・奇天烈になり、恋愛はごく普通の人々が、ありえないような関係を結ぶので、どんな小説を読んでもピンと来なくなってきてしまいました。

 直近でいえば、紀州のドンファンや日大アメフト事件、好い方では将棋の藤井壮太さんやスケートの羽生結弦選手のことなどは小説のシチュエーションの何倍も上を行っていると思います。

 現実世界で、小説でもありえないようなことが、次々と起こるようになってしまったら、小説家は何を書いたらよいのでしょうか。

 方法は二つしかありません。

 一つは超現実の世界。つまり犬や猫がしゃべったり、神様が出てきたり、宇宙や深海を自在に歩くなど。

 もう一つは地道なごく普通の世界。つまりピアノ調律師の日常や、辞書を編集出版する過程など。

 どうでしょうか皆さんは? 私にはこの2つとも好みに合いません。

 したがって小説はほとんど読まなくなってしまいました。

 そのような中、図書館でふと目にした「求愛」に手が伸びたのです。

 相変わらずのタイトルだなー、と思いながら目次をみると30タイトルの短編小説集でした。

 全体の内容を一言で言うと、かつて、もてもて3大Bだった方の現在、です。

 もてもて3大Bとはバンドマン・バーバーマン・バーテンダーの3つの職業。もてて、もてて困るの意味でいうMMKの代表的な人々でした。

 作品中では作家などの自由業に設定されていますが、身を持ち崩すという点ではまさに3大Bそのものです。

 現実に私の友人は、有名人の奥さんを2人取り替えて3人目の看護師さんでやっと落ち着きました。

 何度目かの妻に家やマンションを乗っ取られても懲りずに、今、5人目か6人目の人もいます。

 名前を言えば誰でも知っているバンドリーダーの葬儀のとき、複数いた妻たちや大勢いた愛人たちは誰も参列せず、出席した少数の友人同士が費用を捻出した、との話も聞きました。

 30の短編はこれらのことに似た内容で占められています。

 この話はA君に似ている、これはまったくB君と同じだ、などと思いながら、あっという間に読み切ってしまいました。

 さすがは96歳の恋愛の大御所、そんじょそこいらの小説家にまねはできません。
 

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コメント
この記事へのコメント
小説が好きでその主人公になったような気持ちで想像が膨らんでいきました。

宮尾登美子の小説の中の女性像は現実とはかけ離れていて私の周りにはない人なのでいろんなことを疑似体験できました。

日本独特の秘めた愛・相手のことを察する奥深さ・悲しさを我慢する女の強さ・どんなに辛くても子供を守る母親等日本の美徳がすべて壊れてしまったような今の日本の女性、信じられるものがドンドン失われていくようで悲しいです。

そんな私も変わっていくことが切ないです。

そんなこと言ってたら誰も相手にしてくれませんね。

どれも今は通用しません。笑ってください(^o^)丿
2018/06/18(Mon) 19:11 | URL | hana | 【編集
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