FC2ブログ
 朝日新聞夕刊に、ちあきなおみさんの記事が出ています。

 ちあきなおみさんは一度だけ伴奏をしたことがあります。

 静岡の大きいキャバレーに4人バンドで「さし」に入りました。

 「さし」とはでき合いのバンドの要所要所にサポートとして入ることです。

 悪いことに現地バンドのリーダーがドラマーでした。

 で、楽器を貸してくれないというのです。

 親分が、さされたのでは皆に、しめしがつかないということなのでしょう。

 ごて始めた彼は怒り出してしまいました。

 収拾がつくまで2時間近くかかったと思います。

 その間、ちあきなおみさんは文句一ついわずに待っていました。

 ベースのポール石田さんは東宝芸能学校で、ちあきなおみさんと一緒だったらしく、そのときの話しなどをしながら。

 2時間遅れのリハーサルを、てきぱきとまとめたのはアレンジャーでマルチサックスプレーヤーの田島さんでした。

 その鮮やかなパフォーマンスは今でもはっきりと思い出されます。

 ドラマーの白鳥さんもよく我慢をしてくれました。

 何回頭を下げたかわかりません。頑固おやじに。

 何よりも感心したのは大スターのちあきなおみさんが何事もなかったように淡々と仕事をしてくれたことです。

 「私、もう、いや、帰る」といわれても当然のような場面でしたから。

 それから間もなく、企画制作をしていたご主人が亡くなり、一切歌わなくなってしまいました。

 歌うとは訴うこと。

 魂の叫びなのです。

 その魂がどこかに飛んでいってしまったのでしょう。

 でも、ちあきなおみさんは幸せだと思います。

 飛んで行った魂の代わりに違う魂が入り、満ち満ちているのですから。

 禅僧が目指す最も奥深い境地をさす言葉に破草鞋(はそうあい)というものがあります。

 悟りに奢ることなく、役にも立たず、人に見向きもされず、かといって邪魔にもならず、平々凡々、淡々と。一見破れたわらじのように。

 禅を極めた人と同じ生き方をしているちあきなおみさん。
 
 過去の自分の栄光の実績、手に入れた紛れもない名誉など、これっぽっちの未練もなく捨て去りました。

 いかなる地位や肩書きも手に入れることができただろうに、そんなものには見向きもしません。

 うらやましい。

 破草鞋の人となったちあきなおみさん、教祖様になってほしいくらいです。


DSC03ph859.jpg
11/28 朝日新聞夕刊 6面 ちあきなおみさん 「沈黙の理由」
コメント
この記事へのコメント
チョットした出来事・思いもしない出来事が起きた時その人の人間性が出ます

それは本物です・その時の態度・言葉・考え方でそのひとを知ることが出来ます

とっさの時出る言葉は本物です

素晴らしい人なんですね
2020/12/02(Wed) 13:15 | URL | hana | 【編集
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック